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無題

第1章 始まり(前編)

拭き終えた後は、
服を着せて、

とりあえず
落ち着かせるために
コーヒーを入れて戻ると、
怯える瞳が
郁也をぼんやりと
見つめていた。

コーヒーを差し出すと
首を振るので、
一口飲んでから
差し出すと
チビチビ飲み始めた。

横に座ると
また
固まってしまいそうだったので、
机を挟んで
正面に
腰をおろした。


「俺、学校辞めようかな…」

「…そんな必要はない」

「誰にも顔向けできないし」

「俺とお前しか知らないんだから問題ない」

「じゃあもう話しかけない」

「周りが変に思う」

「でもッ」

「別に、事故って事でいいだろ」

「俺が耐えられない」

「そのくらい耐えろよ」


雅樹は
被害を受けた側
にも関わらず
一言も
郁也を責めてこなかった。

妙に寒いものを感じて
机に置かれた
雅樹の飲み終えたカップと
自分のを持って

逃げるように
キッチンに向かった。

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