テキストサイズ

無題

第5章 変化(後編)

「僕はパパが大好きですよ
って演技。
そしたら母さんが
凄く喜んでくれたから…
しばらく
そうして過ごしてて、
ある時
母さんが出掛けて
パパと二人になった」


「…うん」


「パパは
ニヤニヤしながら
近づいてきて

‘今日はお医者さんゴッコをしよう’

と言って
俺の服を
全部脱がせた」


「…」


「まだ
小学生のガキだったから
何もわからなくて
ポカン
としてる内に
ベタベタ
と全身触ってきて…
その内全身
舐められた」


「…」


「何か変だし
気持ち悪い
と思って少し抵抗したら
いっきに無表情になって
何回も殴られて…

犯された」


「…」


「怖かったし
痛かったし
泣き叫ぶと殴られて…
だんだん
何が何だかわからなくなって、
ただ人形のように
体を預けて
固まってた…」


「もう…」


「全部終わったら
パパが耳元で

‘母さんに言ったら
母さんにお前と同じ事
するからな?
嫌ならこれからも
パパの言う事を
聞くんだぞ’

と言われて
頷く事しかできなかった」


「もう、いい…」


「それから
母さんにバレるまで
ずっと
言われた通りにしてた」


「やめてくれ…」


「中坊になって
母さんにバレた頃には
もう
何も考えられなくなってて、
夫婦ゲンカで
何か言ってたけど
何も覚えてないんだ」


雅樹は
郁也の制止を聞かずに
一気に話してから、
一呼吸おいて
しばらく沈黙した。

話し方は
抑揚や感情に
左右された様子もなく、
ただ
淡々と
静かに
語った。

聞いている方が
耳を塞いで
発狂してしまいそうな内容を

他人事のような
冷静さで
語る雅樹が

何か
人で無いモノに見えて
恐ろしくさえ
感じていた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ