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無題

第2章 始まり(後編)

終業のベルが鳴り
各々ダルそうに帰宅して行くなか
勇治に声かけられた。


「今日どっか寄ってくか?」

「…あー…」


チラリ
と横目で雅樹を見やると
帰る気満々
の雅樹がさっさと
支度をしていた。


「…やー…今日は帰る」

「おぅ」


さっさと出ていった雅樹を
不自然にならないよう
追いかける。

意外と歩くのが早い雅樹に
やっと追いついたのは
下駄箱の所だった。


「歩くの早いな」


緩慢な仕草で振り返った雅樹は
郁也の存在を認識すると
浅くため息をはいた。


「勇治達と出掛けるんじゃないのか?」


本当は
雅樹と二人って
特に話題も無いし
ノリも合わないから
気まずいし
勇治達と合流したかったのだが、

流石に
しばらくは雅樹の方が心配だし
一緒にいるつもりだった。


「別に気を遣わなくても大丈夫だから」

「ッ…そんなつもりじゃないッ」

「…あっそ」


それだけ言うと
雅樹はまた歩き始めた。

急いで靴を
履こうとするが、
急ぐほど
上手く履けなくて
焦れったくなった。


「急がなくても置いてったりしねぇよ」

「あ…」


下駄箱を少し出たところ
で待っていた雅樹が
郁也の
バタバタする姿を
苦笑混じりに
眺めていた。

ずっと
ダサい姿を見られていた事に
羞恥で
顔が赤くなった。

落ち着いて
すんなり
履けた靴が
尚更みっともなくて
わざと靴紐を
結び直した。


「すぐ帰るのか?」

「まぁね」

「…」

「もし暇ならちょっと家寄ってくか?」

「え」

「嫌なら別に…」

「行く…」

「おぅ」


ぽつぽつと
話しながら雅樹の住むアパートに着いた。

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