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まさぐる手

第8章 告白編 三

バスルームからの湯気がモウモウと、せせこましいアパートの、空気の流れが悪い空間をさらに不快にする。住職は驚きからやっと覚めると、おろおろと

「すまん!すまん!」

と何度もガラス戸越しに謝った。幼い頃に風呂に入れた実子でないぶん、こんな場合やはり笑って済ませるというわけにもいかなかった。

…相手からの反応がない時間はとても長く感じた。しかし、娘も二十歳だ。いつまでも、すねてはいなかった。

「おとうさん、見なかったわよね?」

「見ない見ない!何にも見てないよ!」

とっさに答えたが、住職はふとさっきの光景を思い出した…ほんのりと赤みを帯びた白い肌。ふっくらとした胸元…

暑い日だった…突然の事だった…住職のなかでなにかが弾けた…

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