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まさぐる手

第9章 終章

そこまで話して、住職は急に話を終えた。いや、これ以上、先を続けることなど誰に出来ようか。

血が繋がってはいなくても、家族である娘に手をかけてしまったのだ。それは一瞬の気の迷いだったろう。けれど当然ながら、その煩悩が引き起こした結果は、彼を一生悩ませることとなった。

詳しい話はもう聞けなかったが、その後、娘は心を閉ざすようになり、半年ほど経ったころ、『忌まわしい現場』で湯舟に浸かった状態で自殺したらしい。

きっと彼女は男を知らない乙女であったはずだ。それが痛ましいことに、父として認識している男、さらには寺の住職として生きる者に辱められたのだ。

あの手には、性的な雰囲気が全くなかった。幼子の戯れのようで、哀しい想いさえ感じられた。

私はあの鏡を別の寺で供養してもらうことにし、翌日もう一日休暇を取ると、すぐに引っ越した。

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