記憶のカケラ
第7章 別れと…
それから俺達は何も言わず手を握って自転車を引きながらゆっくり帰った。
帰る頃には8時ごろになっていた。
家に帰ると母さんが一人で、電気も付けないでソファに座っていた。
「ただいま。暗い中でなにしてんの?」
そう声をかけながら電気をつける。
母さんは驚いたようにびくっとしとからほっと息をはいて、
「お帰り、遅かったね。今ご飯にするわ。」
なんていいながら立ち上がった。
手には何か持ってたように見えたけど母さんがすぐエプロンのポケットにしまったのでよくみえなかった。
それから台所へ向かう足がゆっくりと止まった。
「…ねぇ亜梨紗。亜梨紗のお祖父様やお祖母様のこと、真由ちゃんから何も聞いてない?」
「え…お母さん達からはいないってことしか聞いてないよ。」
戸惑ったように答える亜梨紗。
「母さんなんかしってんのかよ?」
俺がそう聞くと、母さんは困ったように首を振って、
「もし知ってたら連絡したいと思っただけよ。」
とだけ言ってまた台所へ向かった。