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記憶のカケラ

第3章 勇気

しばらくしてまた教室のドアを開ける音が聞こえたから、また葵がわすれものかな、なんてふりむくと綾ちゃんだった。

「久園まだいたのか。」

「うん。」

そう頷いている間に綾ちゃんも窓から外を覗く。

「暑い中よくやるねぇ。青春だな。」

まだ若い綾ちゃんがそういうのはなんか不思議な気がして私は少し笑う。
そんな私を見て微笑みながら、

「久園、お前も青春真っ只中なんだからな。ちゃんと楽しみなよ。」

「え?」

綾ちゃんの急な言葉に驚く。

「青春してるのもあっという間なんだから。恋も実らしたほうがいいぞ。」

なんていじわるな笑みを浮かべる綾ちゃんに何も言えずに顔を赤くして口をぱくぱく。
ようやくしゃべれるようになった私は

「気づいてたんですか?」

と勢い良く言葉を発する。

「みんなのことみてるからな、じゃぁまぁ気をつけてかえんなさぃ。んで頑張れ。」

なんていいながら取りに来たらしい出席簿をひらひらふって教室を出ていった。

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