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ふしだらと言わないで

第7章 ラブ・エッチ・スリル~あたしだけが特別な感情を~

あたしじゃなくてよかった

だった

柚香は冷静にそう思っていた



壊れた兄をよそに、父親の子供じゃないのも、卒業と同時に家を追い出されて養い手のいる九州に行くのも柚香は自分じゃないことに安堵していた



(あたし…っ!)



考えるだけで吐きそうになる
世界最悪の妹だった

ひとり苦しんでるおにぃを見つめて平然とそう思った柚香は、自分自身が気持ち悪くて消えたかった



そんな置かれた状況下で、おにぃは普通どころか前より明るかった

もし、柚香が同じ立場に置かれたら絶対そんな風に笑えない

自分の生まれ育った場所、
親、兄妹、環境
今まで生きてきた自分を完全否定されて普通でいられるわけない



罪滅ぼしじゃないけど
…おにぃの力になりたい
消えない罪悪感から柚香は何かしたいと思うようになった



「…なにそれ?」
「求人誌」



着替えた柚香はリビングで熱心に見てるおにぃの頭の上から中を見る



「おにぃバイトするの?」
「ああ」
「なんで?」

「別に大したことじゃないんだが…

今からでも少しずつ貯めれば

2、3年後には

行けるかと思ってさ」

「どこに?」

「大学

どうしても、行きたくて」



出してくれる存在がいない突きつけられている現実の重さに負けないおにぃに柚香は言葉を無くした

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