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第18章 元ライブハウス

その間に、海斗は私の好きだった飲み物を私の特定席だった場所に置いていた。

『まぁ…座れよ?』

『そうそう。はい!座ってー。』

二人に促され、言われるまま座っていた。

その席に座ると懐かしさが増していた。

この席から見る室内は変わってるところを探すのが難しい位にそのままだった。

私はこの席が大好きだった。

このライブハウスが大好きだった。

隠れ家的で…。

昔賑わっていたのがひしひしと伝わって…。

最初来た時からどことなく、懐かしい感じがして、その雰囲気が好きだった。

四、五年前の私には、このライブハウスは特別だった。

そして…。

海斗も特別だった。

もちろん響もね。

海斗と一緒にいるの飾らなくていい自分が楽だった。

そんな自分に好意を持ってくれてる、認めてくれてる感が心地よかった。

でも、その好意がたまに嫌でたまらなかった。

海斗は私が自分放棄に、なっていても見守ってくれていた、いい人とも思ってたし。

海斗を好きになれたらとも思ったけど…。


私は女の子…というか梨華にしか恋愛感情が沸いたことがなく、やはり男と付き合うのは出来なかった。

私が梨華に対しての想いと海斗が私に対しての想いが似ていて、この人なら私を分かってくれると思ってた。


でも海斗を苦しめてたのにその時の私は気づいてなかった。

気付いてたら…。

梨華と海斗はこうならなかったのかもと思ってた。

『で?要件は?』

私は海斗の言葉にはっとしていた。

『梨華がお水してるのは海斗が理由なの?』

私はライブハウスに入った時の怒りは消え、懐かしさに浸ってしまったせいか冷静に話していた。

『梨華が夜?へぇー。俺は知らないけど?』

『なんにも?』

『なんにも。』

『そう…。』

私は納得できなかったけど…。

なにも知らない私にそれ以上問い詰めることができずにそのままライブハウスを後にした。

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