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わすれない

第2章 それぞれの傷

「ふっ。」


何も言えないでいる俺の顔をみて中津川さんは笑った。


「ちょっ……笑わないでくださいよ!」



俺はむきになってかえした。中津川さんは若いねぇ~とニヤニヤして言った。



「どうせ、ゆかりの事でも思いだしちまったんだろ? まぁったく。 そんなんじゃいつまでたっても前に行けねーぞ?」




そう言ってまた先に歩いていく中津川さん。
俺は心のなかを見透かされて呆然と立ち尽くしていた。



「おいっ! おいてくぞっ!」


先をいく中津川さんに言われ、慌ててあとをついていった。


───あぁ、今夜も中津川から解放されないか……。



そう思いながら、中津川さんの後ろを歩いた。

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