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三日月の夜に

第1章 猫がきた。

自分は確かに、妻に愛されていた。

自分も確かに、妻を愛していた。


……………はずだった。



それが、いつから変わってしまったんだろう。


いつしか気がついてみたら、そこに愛はなかった。


子供はいない。

特に早く子供を持ちたいというわけではなかったが、いらないと思っていたわけでもない。


ただ自然に任せていただけだったが、なぜか子供には恵まれなかった。


もしかしたら妻は、子供がほしかったのかもしれない。

同じお店で働いて、同じ家に帰る。

つまり1日中、一緒にいる。

ずっと一緒にいたはずなのに、気付かないうちに何かが変わっていた。

いつからか、二人の間に会話がなくなった。


星夜はもとから口数の多い方ではなく、話すのはたいてい花織の方だった。

その花織が、いつからか話さなくなっていた。

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