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三日月の夜に

第5章 確信

花織が本当に出て行った翌朝、ルナが帰ってきた。

不思議な感覚だった。


最初はあれだけ、いなくなると心配で、帰ってくると安堵したのに、今はそれを当たり前のように思っていた。


それでも、一人になってしまった今、ルナが戻ってきてくれてとても嬉しかった。


ルナの柔らかいぬくもりに触れながら、決して後悔すまいと自分に言い聞かせていた。


花織の不貞のことは、結局何も聞かなかった。

世間には、妻の不貞が原因で離婚したなどと言わせない。

これで、夫である自分に責任があることになるだろう。


それで、よかったんだ。


もっともめて、傷つけあって、泥沼になって、お互いを嫌いになって憎しみあって結局別れることになるよりは。

二人で生きてきた思い出を、美しい記憶としてとどめておける形で終わりを迎えられた方が………。

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