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それでも、私は生きてきた

第51章 悲しみと期待

玄関閉めてるよね?マーブル…だすよ。

母に抱かれて玄関先に姿を現した。
マーブルの姿は以前より更に痩せて、毛並みもツヤを失ったように見える。

耳を低く倒し、後退りをしながら、
奇妙な鳴き声を発する。

もう、
私の事を覚えてるわけないか…
そう自身に言い聞かせようにも受け入れがたい姿だった。
痴呆だから。と母は何度も繰り返したが、
マーブルの怯える姿にショックを隠せなかった。

私が手を差し出す事も、目の前のマーブルには恐怖でしかないだろう。
昔のように、
甘え声を出しながら膝によじ登る姿はもう此処には無いのだ。と、自分で自分をなだめいい聞かせながら

怯える声を聞きながら、眺めるしかなかった。


もういいでしょ?

母の一言に頷くしか無い。
私の姿に怯えるマーブルを、
もう少し…とは言えなかった。

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