壊れた御守り
第11章 夢と現実
北條は目をそらさずに続けた。
「君が、仮に医者になって彼女を治したとしよう。
そうしたらその後君はどうする?」
「その…後?」
「彼女を助けることが出来た。これで夢が叶った。じゃあ俺はこれから何を目標に頑張ればいいんだ?
そうなって医者という職業に生きがいをなくしてしまう」
「そ、そんなこと…」
「ないって言い切れるか?」
俺は口を噤んだ。
「いいか。助けたいと思う相手を特定してしまうというのはそういうことだ。
不特定であればあるほど、医者って言うのは成立する」
「それでも医者を目指すなら俺は何も言わない。ただ-」
「現実から目を背けるな。君が医者になるまで、彼女がもつかというのは確実ではない。夢と現実をわきまえろ」
北條はそう言って、病室を出て行った。
俺、何も言えなかった。
あれが、医者?
あれが、プロなのか?
人を生かすこと
誰か1人じゃなく
どんな人でも。
俺はしばらくその場に立ち尽くしていた。