壊れた御守り
第12章 土下座
風が優しく吹き荒れる。
麻美の、小さな寝息が聞こえる。
麻美の心臓がトクトク動いてる。
当たり前のようで、すごく貴重なこと。
なぁ、麻美。
なんど、この場を離れようとしたかわからない。
ただ、離れようとして、それでも出来なくて
このどうしようもなく流れる涙を堪えるのに必死だった。
「麻美…。…麻美…っ!!」
現実を見ろ。
この愛らしい彼女を救うのは
俺じゃないんだ。
俺にできることは
ただ、麻美を遠くから見守ってやるだけ。
たとえ、もう触れられなくても
麻美の声を聞けなくても
それでもいいと思えるのは
やっぱり麻美を大事に思うからなんだ。
「おやすみ。麻美…」
布団をかけ直して、 俺は麻美の額にそっとキスをした。
静かに眠る麻美をじっと見つめて
ゆっくりと病室をでた。