壊れた御守り
第12章 土下座
「どうした?」
北條が眉をひそめて俺を見た。
静かな夜の病院で、俺達だけの声が響いていた。
「今のうちに…麻美が寝てる間に、連れて帰ってください」
「何を…」
「すぐに帰って、安静にさせてください。病院から出ると麻美は…すぐに無茶をしてしまう」
俺は北條をじっと見据えていった。
北條はそんな俺を訝しげに見つめた。
「ずいぶんな心境の変化だな。さっきは俺を睨みつけていたのに」
わかってる。
んなのわかってんだよ。
俺だって本当はこんなこと言いたくねぇんだ。
せっかくの修学旅行は最後まで参加させてやりてぇし
無理矢理帰らせることがどれだけ麻美を悲しませるかわかってる。
だけど、苦しむ麻美を見るのは嫌だ。
だから…
「小南くん…!?何やって…」
北條が驚いたように動揺の声を漏らした。
俺が、床に手をついて頭を下げたから。
「麻美を、助けてやってください」
生まれて初めての土下座は
たった一人の女の子を守るためのもの。
流れる涙を堪えて、俺は北條に頼み込んだ。