壊れた御守り
第14章 Happy birthday
「長嶋…お前何言ってんだよ」
俺はやっとのことでそう発した。
麻美が健太のものになる?
そんなわけねぇだろ。
第一、麻美はものじゃねぇし
それに麻美には俺との約束が…-
約束…。
まだ、成立すんのかな…。
俺が勝手に離れたくせに
麻美はまだ、あの約束を覚えてくれてんのかな…。
「いくら待ったって、彼女はどうにもならないわ。それなら、それで苦しむなら…私を見てよ」
凌華が泣きそうな顔で俺の腕にしがみつく。
必死で、必死で…。
「長嶋…俺さ……」
「私は、慶太くんのためならなんだってするよ?
彼女みたいに慶太くんを苦しめたりはしない。
あたしだったら絶対に…」
凌華の言葉を遮ったのは俺の右手で、
無意識に口を塞いでいたことに自分でも驚きを隠せなかった。
「長嶋、それ以上勝手なこと言ったら怒るよ?」
「え…?」
凌華がびっくりしたように俺を見上げた。
「麻美のこと、何も知らねぇのに悪く言うなよ」
「慶太くん…?」
凌華の瞳に、さっきまでのような強い力はなくなっていた。
ただじっと、その瞳を揺らめかせていた。