テキストサイズ

壊れた御守り

第14章 Happy birthday



「は?」



「お願いだから、行かないで。ここにいてよ…」




凌華がまた泣き出した。



彼女は女の子らしく、小さく泣くんだ。


麻美とは違った雰囲気がある。



だから、目が離せなくなるんだ。



凌華の中には何かがありそうで、



この場を離れると一瞬んで壊れてしまいそうな



そんな気がするんだ。



「…わかったから。泣くなよ」



「え…?」



「長嶋の気持ち、伝わったからさ。泣いたりすんなよ」



俺が優しく涙を拭うと、凌華はびっくりしたように俺を見て



それから静かに笑った。


















だけど、俺は凌華を傷つけてしまったんだ。




空がオレンジに染まり始めた頃、




俺は目にしたんだ。




観覧車の前で、列に並ぶ2人の姿を…。



「麻美…」




「えっ…?」







麻美が、笑ってる。



苦しそうに。




それに気づいていないような




笑顔の健太が横にいた。




気づくと俺は、凌華を忘れて走り出していた。




わかってた。



凌華が後ろで呼んでること。




だけど、俺にはただ遠くに見える愛しいあの子のことでいっぱいだったんだ。






ストーリーメニュー

TOPTOPへ