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壊れた御守り

第15章 凌華の涙


観覧車から降りるともう閉園のベルが鳴り響いていた。



出口には健太が立っていて、俺たちを見つめてにっと笑った。



「何?やっと仲直りしたのかよ」



「喧嘩なんてしてねぇよ」



「いちゃこらしてんなよ。傷心の俺の前でさ。
それより、慶太…」



健太がいきなり顔を曇らせた。



なんだ?



妙に真剣な顔つきに違和感を感じる。



健太は俺をじっと見つめて言った。



「凌華、さっきまでいたんだけどさ、お前らが降りてくる直前にいなくなって」



「は?帰ったんじゃねぇの?」



「違うんだ。いつもの凌華じゃなかった。ずっとお前の名前呼んでてさ…ちょっと泣きそうだったから心配で」




俺を呼んでた?



なんで?



“慶太くんが好きなの”




あぁ、そうか。




俺、間違った?




凌華のことはそっちのけで



麻美のことしか考えらんなくて置いてきてしまった。




だから?




俺、凌華を傷つけてしまったのか?




「慶ちゃん…」




心配そうに麻美が俺を見た。



健太はケータイをいじって首を横に振る。



「だめだ。電話もメールも通じない。どこ行ったんだあいつ…とりあえず、俺は家に寄ってみるから悪いけどこのへん探してくんねぇかな」



「…わかった」



健太が走っていく姿が遠くなる。



麻美が俺の腕を引っ張った。



「行こう。慶ちゃん。凌華ちゃん?知り合いなんでしょう?」



「麻美…。一旦病院に行こう。お前は帰んなきゃダメだ」



「大丈夫だよ。あたしも一緒に…」



「だめだ!!」



俺は麻美の手をとって歩き出した。



頭の中では、麻美と凌華がぐるぐると



代わる代わる俺の名前を呼んでいた。




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