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壊れた御守り

第15章 凌華の涙



“慶太くん、男の子だもん”


凌華がそう言ったのが今、ようやく理解できた。



あぁ。確かに。
俺は何も言えない。


凌華が妙に明るくて、時折淋しそうで、


それでも笑っていたのは



その事実を隠していたからなんだ。



きっと、忘れたくて



これから知り合う相手に悟られたくなくて



必死に明るく振る舞っていたんだ。



誰にも言えずに、ずっと独りで…。




あいつが憎い。



あのおじさんが、すっげぇムカつく。



今すぐにでも殴ってやりてぇ。



そんな感情を必死に抑えて



俺は立ち止まった。



近くにベンチを見つけて、そこに凌華を座らせた。



「…辛かったな。独りで、ずっと頑張ってきたんだな」



「え…?」



「でも、もう大丈夫だ。もう頑張んなくていいよ。な?」



何を言っても、凌華の傷が癒えないことはわかってる。



だけど、だけど俺は凌華の頭に手を乗せた。




凌華が望んでいたのは




こうした、誰かの温もりだったのかもしれない。




凌華の涙は




誰かに愛されたい



誰かに必要とされたいっていう




そんな訴えだったのかもしれないと




俺はそう思ったんだ。





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