壊れた御守り
第16章 麻美と凌華
病院を出てゆっくり歩くと、凌華が俺の顔を見て言った。
「やっぱり、麻美ちゃんは良い子だったな」
「麻美が?」
「うん。これもくれたし」
凌華が嬉しそうに先ほど貰っていたルーズリーフを胸の前に持ってきた。
「なぁ。それ…あけねぇの?」
「見るのは今じゃないもん!!まだ…まだ……」
“まだ辛いときじゃない”
凌華はそう言いたいんじゃないかなって思った。
俺はそんな凌華の手を引いて歩いた。
「慶太くんは、辛くなった時とかある?」
「え?」
辛くなった時…。
そんなの
「俺は適当に生きてるバカだからね。そんなんねぇよ」
「なにそれ。慶太くんって面白いね」
「まぁな。ほら、手に持っとくと落とすぞ?」
そんなん、いっぱいあるに決まってんだろ。
辛そうな麻美を見た時
俺が何も出来ないんだと悟った時
麻美から離れた時…
俺が辛いって感じるのは
いつだって麻美だったよ。
凌華は静かに笑って俺のあとをついてきた。
もうすぐで2時を回る頃、
遠くの方にあいつの姿を見つけた。