壊れた御守り
第5章 麻美のバトン
「見つけた」
「慶ちゃん…?」
麻美は振り返らずに呟いた。
「ここで何やってんだよ。あっち行こうぜ」
麻美は黙った。
きっと、リレーのこと気にしてんだな。
俺が近づこうとした時、ふと気付いた。
麻美、震えてる…。
「…泣いてんのか?」
恐る恐る聞くと、麻美は首を横にふった。
「…泣いてないよ?全然…っ大丈夫」
そう言って強がってみせる麻美。
だけどその声は弱々しくて、
その声を聞いた瞬間、まるで殴られたような痛みを感じた。
「リレーなんて気にすんなって!
お前頑張ったじゃん。
3位だぞ。3位」
「……っそれは、慶ちゃんが頑張ったから…」
「…なぁ、3位だったのは俺が走ったからってわけじゃねぇよ?」
「え?」
「お前があの瞬間、踏み込まなかったら3位は無理だった。だから、頑張ったのはお前だよ」
俺がそう言うと、麻美は初めて振り返った。
顔は真っ赤で、涙で濡れていた。
「やっぱり泣いてんじゃん」
「慶ちゃん…ありがとぅ…」
「ほら、打ち上げいくぞ」
なぁ、麻美。
俺があのとき、走ったのは
正しかったのかな。