壊れた御守り
第9章 約束
花火が後ろで輝く。
麻美の姿を、ほんの少しの間だけはっきりと映し出す。
「慶ちゃん、ありがとう」
「麻美…」
お互いの小指だけが交わるその手を
そっと静かに離す。
俺は麻美の顔を見て、微笑んだ。
あぁ。良かった。
麻美が、笑ってる。
これだ。
これなんだ。
もしかしたら俺は、この無邪気な笑顔に惚れたのかもしれない。
「そろそろ帰るか?」
俺がそう聞くと、麻美は静かに首を横に振った。
「花火が終わるまでの間だけ…こうしていさせて……」
麻美はそう言って、俺の肩に寄りかかった。
花火が終わるまで-
そう、消え入りそうな声で言った麻美は
花火に負けないくらい綺麗だった。
なぁ。麻美。
約束、だからな。
こうして、来年も再来年も、その次も
変わらずにこう在り続けよう。
花火が終わった後の麻美は何かを振り切ったように
ただ真っ直ぐ、前を見つめていた。