職業、遊び人ですが?
第1章 女勇者と遊び人
「さぁて、可愛らしい勇者さん」
頬杖をついていた右手が顎に移る。分析が終わった合図である。
(ついに…!)
店員は息を飲む。今でこそ淫乱な性欲優先になってしまったが、仕事の腕は折り紙つきである。
「勇者さんなら特約条例書は持ってるわね?」
「あ、あります!」
特約条例書とは酒場の手数料をその国が肩代わりしてくれるものである。少女は背にあったリュックから便箋を取り出してラルーに渡す。
「本物ね」
中身を見ずともその印で真贋は判別できた。
ちなみにであるが、ラルー酒場で最も高く設定されているのは38万ゴルド(以下、Gと略す)であり、パルテール王国勤務員の平均日給が500Gであるから中々、手が出るようなものではない。
(誰を勧めるんだ…?)
店員は目を丸くしている少女を見る。装備品はランクFの下位であるところから考えれば、低レベル。だが、勇者。冒険者として旅立つのが決められた道筋である。
スキルも悪くないレベル71の戦士。火系しか使えないが、その火系魔法はスキルランクAが使える魔法使い。稀少職業の魔物使いや戦術家なども組み合わせとしては悪くない。
(高レベルが絶対条件だな)
一般的にレベル50以上が高レベルと呼ばれる。繁忙期で補充の難しい今、ラルー酒場には3人しかいない。
(戦士のフパタがベターだ)
レベル71であれば、独立も心配することもなく、大抵のモンスターは倒してくれる。相手が勇者であるから、レベル1であろうと嫌な顔はしないはずである。
店員はそう結論つけたが、ラルーは違った。
「惜しいけど、ゼックスがピッタリだわ」
「なるほど、レベルも高いですしね。彼なら毎日が楽しく過ご…ん? えええっ?」
見事な店員のノリツッコミが炸裂した。