貧乳ヒメと書かない作家
第16章 黒幕
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「松田さん?!
入って来ちゃだめですよ!」
千春は驚いて言った。
「ここ女子トイレですよ!」
松田と千春は外回りを済ませたあと、
松田を先に編集部に行かせ、社内の女子トイレにいっていたのだ。
しばらくして、ちょうど用を済ませ、手を洗っていた時だった。松田が女子トイレに入ってきたのは。
千春はきょろきょろと見渡した。良かった、他に誰もいない…。
松田は息を切らしていた。編集部から走って来たのだろう。
でも、ここまで息切らすほど距離あったっけ。
「大変なんです!はぁっはぁ…
桐生先生が!風戸さん!急がないと!」
「大変?桐生先生が?なんでですか?」
「いいからっ僕の車に乗って下さい!」
千春はわけがわからなかったが、松田に連れられ、車に乗り込んだ。
松田が車を走らせる。
「どうしたっていうんですか?」
松田はそれに応じず、逆に質問してきた。
「風戸さん、桐生先生とケンカしたんですか?」
「えっ…」
「桐生先生は風戸さんと仲直りしようと5年越しの蹴りをつけにいったんです」
松田は続けた。
「桐生先生には如月先生の依頼を断る本当の理由があったんです」
「えぇっ?」
桐生はバーターが嫌だってやらなかったんじゃ…。
「桐生先生は…脅されてたんです」