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貧乳ヒメと書かない作家

第17章 ナイト

「え…」

渡来野は何故か困惑した表情になった。

「千春…とは、お前の担当者のか?」

「あぁ…」

桐生はそう答えたが、

千春の隣で松田が無言の抗議を示していた。

(た ん と う は
ぼ く で す ! )

「そんな…はずはない」渡来野は取り乱していた。

「何言ってんだよ…お前に俺の何がわかるって言うんだよ!」

「如月先生ではないのか?」

「はぁ?!」

「わたくしはてっきり…如月先生に近付きたいが為に言っているのかと」
「んなことしねーよ!
ちょっとしか会ったことねぇし。大体言い寄ってきたのは…」

渡来野は桐生の声が聞こえていないようだった。
頭を抱え、身をよじっている。

「わたくしは…ただ…如月先生に…手を出させまいと…」

「渡来野…?」


「如月先生は…自分のために、身を汚し過ぎた。これ以上、汚れて欲しくなかった…」

渡来野はその場にうずくまって嘆くように語り出した。

「自身の作品を売るために、彼女はどんな下劣な相手とも身を重ねた…
危うく命に関わったこともあった…。

先生は誰にでも自分を安く売るひとになってしまった。

わたくしはただ…それを回避したかった…」


何も聞いてないのにこんなこと話していいのかよ…?

桐生は止めたい気持ちになった。

渡来野のそれは自分の気持ちと、どこか通じるものがあった気がしたからだ。



「千春さん?」松田がなにやらゴソゴソしだした千春に言った。

やっと我を戻した千春は鞄から携帯電話を出していた。

そして、電話をかけた。


「もしもし!?」




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