素直になろうよ
第1章 枯れない涙
もうすっかり冷めてしまったコーヒーを一口啜った。
ブラックコーヒーのはずが、少し塩気のある味がした。えらい不味い。
それで、ようやく自分が泣いていた事に気がついたんだ。
加瀬宮秋。27歳。独身。名の知れた食品会社に勤務。営業部企画課所属。
企画課、なんていっても、結局のところ何でも屋のような仕事ばかり。社内のコンペやら会議やら何ちゃら式やらの企画構成運営、その他いろいろ。
いい加減にしろって位に仕事は山積みだった。
知らないうちに流れる涙は、どうせ拭ってもまた流れてくるから、もう無視する。
深夜0時のオフィスなんて、もう誰もいるはずもなく、節電を意識して天井に並ぶ蛍光灯も、俺のデスクの上の一列だけが点いている。
薄暗いシンと静まり返ったオフィスには、俺の叩くキーボードのカチャカチャ音だけが響いていた。
目の前のパソコンの画面が、ぼんやりと霞んでいる。
来月、創立50周年を迎える記念式典とやらを開く事になっている。
これがまぁ、社を挙げての一大イベントになるわけで、総指揮を取る上司の内海課長率いる企画課総勢6名は、もうずっとオーバーワークだ。
ピンポンパンポーン!ピンポンパンポーン!
デスクの上に放り投げてあった携帯が、この場に不釣り合いな音を立て、メールの着信を知らせた。
ブラックコーヒーのはずが、少し塩気のある味がした。えらい不味い。
それで、ようやく自分が泣いていた事に気がついたんだ。
加瀬宮秋。27歳。独身。名の知れた食品会社に勤務。営業部企画課所属。
企画課、なんていっても、結局のところ何でも屋のような仕事ばかり。社内のコンペやら会議やら何ちゃら式やらの企画構成運営、その他いろいろ。
いい加減にしろって位に仕事は山積みだった。
知らないうちに流れる涙は、どうせ拭ってもまた流れてくるから、もう無視する。
深夜0時のオフィスなんて、もう誰もいるはずもなく、節電を意識して天井に並ぶ蛍光灯も、俺のデスクの上の一列だけが点いている。
薄暗いシンと静まり返ったオフィスには、俺の叩くキーボードのカチャカチャ音だけが響いていた。
目の前のパソコンの画面が、ぼんやりと霞んでいる。
来月、創立50周年を迎える記念式典とやらを開く事になっている。
これがまぁ、社を挙げての一大イベントになるわけで、総指揮を取る上司の内海課長率いる企画課総勢6名は、もうずっとオーバーワークだ。
ピンポンパンポーン!ピンポンパンポーン!
デスクの上に放り投げてあった携帯が、この場に不釣り合いな音を立て、メールの着信を知らせた。