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素直になろうよ

第1章 枯れない涙

視線を携帯に投げかけて。

じっと見つめて。

顎に溜まってポタポタ落ちている涙を手の甲で振り払って。


それから。


意識を引きちぎるようにして、視線をパソコンに戻した。

「その手にはのらねーんだよ」

誰からかは、分かっているから。
今日のこんな時間にメールをよこす奴なんて。

着信したメールを頭から追い払おうと、手元の幾つかの資料を眺め、表に数字を打ち込んでいく。

「その手には、のらねーよ」

もう一度同じ事を口にして、そういやさっきも言ったな、なんてちょっとおかしくなった。
顎からこぼれ続けている滴は、膝の上に点々とシミを作り出していた。


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