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素直になろうよ

第6章 絡まる気持ち

「なぁ」

もうもうと舞い上がる埃が、気管に入り込み咳が止まらない。


「なんすか?」



企画課資料室は、過去使用した資料が綺麗にファイリングされて、燦然と並んでいるような、そんな夢のような部屋ではなかった。



「お前、加瀬宮先に戻っていいぞ」


手を伸ばしても届かないような背の高いスチールの棚に、無造作に詰め込まれた段ボール。


「何いってんですか。こんな中から20年前の式典出席者名簿探すとか、一人じゃ無理でしょう」



段ボールの中には、ファイリングもされていない、ただ積み重ねられただけの資料。





「二人でも無理だな」



そう言って自棄になったように笑いはじめた内海は、段ボールをポンポンと撫でるように叩いた。

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