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素直になろうよ

第9章 神にも祈ろう

「いいって。お前の曲がったヘソが直ったんなら、それでいいよ」


自分の下劣な欲望を隠すために、とびきり明るい調子で声を発した。



「課長には、本当に今まで心配かけたり、迷惑かけたりして来ましたけど」


加瀬宮が真剣な目で、少しも視線を外さないで俺を見るから。


ドクン。

心臓が音を立てた。




「ここまで目をかけてもらって、本当に感謝してるんです」

「なに、急に。お前、変だぞ?」


「ありがとうございました」


くすぐったいような気持ちになり、照れも混ざって。

ちゃんと加瀬宮の顔を見ていなかった。


「ただ、ちゃんと伝えておきたかっただけです」




ニコニコと笑っている加瀬宮の顔が強張っていたことに、少しも気がつかなかった。




すき。

そればかりが頭の中を巡っていたのだから。

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