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妄想しながら素直になろうよ

第9章 映画で妄想

足元に小さく丸くなって眠り込んでいる王子が、長いまつげをゆっくりと瞬かせて目覚めた。
濃いブラウンの柔らかな髪が、頬にかかり疲労感を感じさせる。
目には力がなく、少し腫れぼったいような印象すら抱かせた。


「あぁ、加瀬宮、おはよう」

かすれた声と共に柔らかな笑みを浮かべる。


「おはようございます。身体は、何ともないですか?」

昨日、生気を森の木々達に惜しみなく分け与えた結果、王子は俺の癒しを施す間もなく意識を手放してしまった。
父親である国王が森を焼き払い、オーブを奪い去った事への償いだとしても、余りにも酷な仕打ちだというのに。
この人は、甘んじてそれを受け入れ、俺の元に留まっている。

無理を強いた事に罪悪感を抱きつつ、目の前の笑顔に顔が綻んだ。


「うん。身体は・・大丈夫。少しだるいけど、ね」

内海はゆらりと起き上がったが、少しふらついているようだった。


「無理、させましたね」

そう言って、フラフラしている内海の後頭部を支え、引き寄せる。

唇を重ね、薄く空いた隙間に舌を差し入れた。
戸惑う舌先をくすぐり、ねっとりと絡め取る。
舌の裏を舐め上げ、浮いたそれに吸い付いた。

「っふ・・・っん・・」

自分の口内に導いた内海の舌は、所在無げに震えていたが、やがて意思を持って俺に絡めてくる。

お互いの唾液が混ざり合い、それを内海の口内に送ってやる。
彼は喉を上下に動かしながら、それらを飲み込んでいった。



どれだけ唇を重ねていただろうか。
内海の身体がしっかりと自立し、けだるいオーラが失くなった。

ゆっくりと身体を離し内海を確認すると、頬を上気させながらも力のこもった目で俺をみた。


「少しは楽になったでしょう」

「うん、ありがとう。でも君の力を俺まで貰ってたら本末転倒だよな。ごめんな、加瀬宮」


内海はへにょんと眉を下げ、困ったように笑った。

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