
気が狂いそうな快感の後に
第4章 マフィアと海に遊びに行こう
特に会話らしい会話もせず、私と翡翠は海を泳いでいた。
無邪気にはしゃぐ千歳たちの声が遠ざかり、いつの間にか結構沖まで来てしまったようだ。
「これ以上行くと足が着かなくなるな」
翡翠がぼんやりと言う。
私はその横顔を見ていた。さらさらなブロンドが水に濡れて頬に張り付き、長い睫毛から雫が垂れる。
「なに、見とれてんだよ」
「は!?なわけないでしょ…」
「しょーがねーなー、遠慮しなくて良いんだぜ?いくらでも見てくれや」
「だから見とれてなんてないって」
ああ、もう、絶対面白がってる。
「そうやって人のことからかって笑うのやめて」
「ん?」
「こんなんだったら千歳の方がまだマシだよ」
自分で言って少しびっくりした。
千歳の方が「まだマシ」って…
「なんだそれ。千歳に何かされたのか?」
「いや、違うの」
確かに顔だけで選ぶとしたら、千歳より翡翠の方が圧倒的に好みだ。千歳の顔立ちも悪くはなく、寧ろかなり良い部類に入ることは分かっているのだが、彼には男らしさというものが感じられない。とにかく猫っぽいのだ(勿論あくまでも仮定で、そんなことは実際有り得ないし、そもそも私は翡翠は兎も角として千歳には何も言い寄られていないのだが)。
しかし性格的な問題を考慮すると、どう考えても千歳に軍配が上がる訳で。
「さてはお前、千歳にキレられたか?」
「はあ?」
「おおよそNGワード言っちまったんじゃねえ?びびるだろ、あいつが本気でぶち切れると」
「いや、切れられてなんかないけど」
寧ろ千歳はこの一週間、一度も私に対して声を荒げなかった。というか、やけに冷たいというか、私との会話を避けているような感じだった。
「そうなのか?じゃあ良いけどよ。ひとつお前に言っときたいことがあってなあ」
そして彼は、私に顔をぐっと近づけてきた。綺麗すぎるほど綺麗な顔がアップになって私の目に映る。
波の音とカモメの鳴き声がやけにうるさく聞こえた。
「…お前を狙ってんのは、あいつだけじゃあねぇんだぜ?」
無邪気にはしゃぐ千歳たちの声が遠ざかり、いつの間にか結構沖まで来てしまったようだ。
「これ以上行くと足が着かなくなるな」
翡翠がぼんやりと言う。
私はその横顔を見ていた。さらさらなブロンドが水に濡れて頬に張り付き、長い睫毛から雫が垂れる。
「なに、見とれてんだよ」
「は!?なわけないでしょ…」
「しょーがねーなー、遠慮しなくて良いんだぜ?いくらでも見てくれや」
「だから見とれてなんてないって」
ああ、もう、絶対面白がってる。
「そうやって人のことからかって笑うのやめて」
「ん?」
「こんなんだったら千歳の方がまだマシだよ」
自分で言って少しびっくりした。
千歳の方が「まだマシ」って…
「なんだそれ。千歳に何かされたのか?」
「いや、違うの」
確かに顔だけで選ぶとしたら、千歳より翡翠の方が圧倒的に好みだ。千歳の顔立ちも悪くはなく、寧ろかなり良い部類に入ることは分かっているのだが、彼には男らしさというものが感じられない。とにかく猫っぽいのだ(勿論あくまでも仮定で、そんなことは実際有り得ないし、そもそも私は翡翠は兎も角として千歳には何も言い寄られていないのだが)。
しかし性格的な問題を考慮すると、どう考えても千歳に軍配が上がる訳で。
「さてはお前、千歳にキレられたか?」
「はあ?」
「おおよそNGワード言っちまったんじゃねえ?びびるだろ、あいつが本気でぶち切れると」
「いや、切れられてなんかないけど」
寧ろ千歳はこの一週間、一度も私に対して声を荒げなかった。というか、やけに冷たいというか、私との会話を避けているような感じだった。
「そうなのか?じゃあ良いけどよ。ひとつお前に言っときたいことがあってなあ」
そして彼は、私に顔をぐっと近づけてきた。綺麗すぎるほど綺麗な顔がアップになって私の目に映る。
波の音とカモメの鳴き声がやけにうるさく聞こえた。
「…お前を狙ってんのは、あいつだけじゃあねぇんだぜ?」
