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他人事

第1章 親友の死

桐原あずさは30歳の女弁護士である。大学卒業後、三回目のチャレンジにして司法試験に合格し、現在は敏腕弁護士として名を馳せている。しかしその間に大学時代に付き合っていた彼氏には逃げられたりと、失ったものは大きい。現在は独り身である。

そんなあずさの元に連絡が入った。
「もしもし、桐原法律事務所ですが」
「もしもし、私警察の者です。突然ですが、鈴木恵子という女性についてご存知ですか?」
「ご存知も何も、私の十年来の親友ですが」
「そうですか。実は今朝、鈴木恵子さんと見られる遺体が発見されまして」
「何ですって。本当に恵子なんですか」
あずさは動揺を隠せない様子であったが、警察官は冷静に続けた。遺体が見つかったのは今朝7時頃。犬の散歩をしていた老婆が近くの公園で発見し、通報した。サイフの中身から名前は鈴木恵子と判明。また携帯の着信履歴や知り合いの情報などで、桐原あずさが友人と判明したそうである。
「詳細を知らせてくれてありがとうございます。それで、どうして警察の方が私に連絡を?」
「それなんですが、鈴木恵子さんには激しくレイプされた跡がありまして、こちらとしてはストーカーに近い犯行と考えております。お心辺りがあれば教えていただきたいのですが」
「レイプですって。でも、恵子は全然それをほのめかすような事は言ってませんでした。何かあればすぐ私に相談してくる子だったので、ストーカーされてそうなら、まず私に相談してきたと思います」
「そうですか、分かりました。確かにその他の聞き込みでも、ストーカー被害にはあってなさそうでした。また何か分かったら連絡します」
そう言って警察は電話を切った。あずさは正気を取り戻し、親友を殺した犯人を自分の手で見付け出す事を決意した。あずさは警察ではないが、犯人探索のため、既に手は打ってあった。

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