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罪に犯されて[仮]

第1章 すべてのはじまりの日

と、四つ折りにされた福沢諭吉が、
三人目の前でゆれた。
目の錯覚か、こちらを侮蔑するように
みてくるようだ。

その視線を遮るように、
左手でさらに折り目をつけるように
握りしめる。


「もの好きだな、お前も」
「何とでも?かの有名な
春夏冬 伊織(アキナシ イオリ)を
俺の好きにできるなんて興奮する」
「....変態」
「きしし.....焦らしてる?はやく脱いで」


福沢諭吉にも咎められそうだから、
ボタンをはずし、ワイシャツを脱ぐ。


「あきちゃん、すごい綺麗だよ」
「ごたくはいいから、早くしろ」
「...はいはい。」


今までのふざけた雰囲気がきえる。
こいつのこの顔は、


嫌いじゃない。



「ふわぁ...」
「あきちゃん、アクビなんて空気台無し」
「てめぇが退屈させねぇようにしろよ」
「うあ、あきちゃん、動いちゃだめだって」
「無茶いうなよ。あと何時間このままでいろって?」
「んー....あと、40分?」
「しね」
「あーっ!いてっっ」
「うるせぇ。...なんだよ、ほとんど描けてるじゃねぇか」

奥井の頭をはたきながら、
スケッチブックを奪い取れば、
自分がこちらを眺めている。


「あきちゃんって、30分以上じっとしてらんないのね」
「おんなじ格好で、見る先が金髪バカじゃな」
「ああん、つれなぁい」
「気色悪い声出すな」
「つか、あきちゃん。たとえ、目の前が絶世の巨乳美女でもまてないんじゃないの?」
「さあね」
「...あきちゃんも、好きな奴つくったら」
「..さあね」
「そうすりゃ、あ」

おそらく、春夏冬の名前を発言しようと
い、と口を開いた形で、音になる前に、
奥井が教室の扉へ顔を動かす。
春夏冬も、ほぼ同時にだ。


運命の警鐘。

そう、警告だ。

そして、俺は、警告を無視したのだ。

どのような鐘が、
どのようなつもりで、
誰がその鐘を鳴らしているのか、


その鐘の元へ、走って行ったんだ。






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