
ロイヤル&スレイヴ!
第4章 3.ウワサのあのコとあの4人
「ひっ……!」
私を取り押さえていた腕の力が次々と緩み始めた。
滝くんの気迫に当てられて、怯え切った生徒たちが後ずさる。
逃げ惑う彼らの、机や椅子にぶつかる音が何度も響いた。
「馬鹿!何やってる、お前ら!」
「やべぇよ、東堂さん!いくらなんでもあいつら全員敵に回したら……!」
「俺たち、学園に居られなくなる……くそおおおっ!」
「待て!」
後に続く言葉は聞き取れない。
けれど、取り乱す生徒たちに向かって東堂くんが何かを必死に叫ぶ。
しかし、彼らはすでに聞く耳を持たず、半ば錯乱状態に陥っているのか、我先にとばかりに駆け出していた。
――その瞬間、滝くん以外の4つの影たちも、動いた。
「楓!未結んとこ行って!」
「了解!」
滝くんに名前を呼ばれた影の一人――楓くんが短く返事をする。
散り散りとなった生徒たちをかき分けると、瞬時に間合いを詰めて、東堂くんを突き飛ばした。
ガシャン、と派手な音が響く。
突き飛ばされた東堂くんの身体が崩れた机へ雪崩れ込んだ音だった。
それによって、覆い被さっていた東堂くんからの圧迫から解放され、私は自由の身となる。
これで、私を取り押さえるものはいない。
早く起き上がらなくちゃ。
脳は手足に動けと信号を送る。
送っている、はずだった。
硬直しきった身体は意思に反してびくともしない。
もう誰からも拘束をうけていないはずなのに、見えない腕が私を取り押さえているみたい。
なに、これ……。
また、恐怖で胸の中が塗りつぶされていく。
