
ロイヤル&スレイヴ!
第4章 3.ウワサのあのコとあの4人
あの言いようのない嫌悪感が頭を過ってからだ。
いまだ続く頭痛といい、息苦しさといい、私の身体は私の知りえない何かが支配している。
なんて、おかしな状況だろう。
「身体、ちょっと触れるね」
身体に起こった異変を知ってか、それとも単に怯えているだけと思われたのか。
一言置いてから、楓くんは壊れ物を扱うようにそっと私の腕を引き、背中に腕を回して抱え起こす。
露わになっている胸元を隠すために、楓くんは、脱いだブレザーを私の身体にかけてくれた。
見られた、という羞恥心に頬が熱くなるけれど、
私の身体を強引に触れようとしていた東堂くんたちとは違って、不快感はない。
むしろ、楓くんの体温が残ったブレザーが強張った私の心身を解きほぐしてくれる。
ほのかなぬくもりに、私の気は緩んでしまい、涙が一つ、零れた。
それを見てか楓くんは絞り出した声で、未結、と私の名前を呼ぶ。
だめ、これじゃあさらに心配かけちゃう。
言わなきゃ。
大丈夫だよって。
ありがとうって。
「…ぅ……っ」
違う。
違うんだよ。
楓くんのことが嫌なんじゃないの。
ちゃんと声に出して言いたいのに、涙が邪魔をして、うまく喋れない。
