
ロイヤル&スレイヴ!
第4章 3.ウワサのあのコとあの4人
「おそくなってごめんね…っ、未結」
ぎゅ、と強いぬくもりが私を包んだ。
楓くんが、ブレザーの上から、強い力で抱きしめてくれていた。
同じくらいの背丈なのに、女の子よりも可愛い見た目な楓くんなのに、
包み込んでくれる力は紛れもない、男の子のもの。
けれど楓くんはすぐ身体を離す。
私を見る表情は痛々しいくらいに歪んでいて。
今にも涙がこぼれるんじゃないかと、
私が、そんな顔をさせてしまったのかと、胸が締め付けられた。
「楓。そのまま斎宮さんの目、隠しててあげてくださいね!」
不意に、また、聞き覚えのある声がした。
恭介くんだ。
楓くんは言いつけを守るように私をもう一度抱きしめた。
「――だいじょぶだよ、未結。恭ちゃんがいるから。猛ちゃんも暁くんもすっごく強いんだ。すぐ終わるから」
赤子をあやすように優しく囁いては、くしゃくしゃに乱れた私の髪を解きほぐしてくれる。
すぐ終わるから、そう呟いた楓くんは、少しだけ強引に、自分の胸板へ私を押さえ付けた。
途端に視界は遮られ、何も見えなくなる。
鼻先をふわり擽るのはとシトラスの香り。
視界を覆われると他の感覚が冴えるのか、仄かな香りが私を包む。
