
ロイヤル&スレイヴ!
第4章 3.ウワサのあのコとあの4人
楓くんの香水かな、なんて
こんな状況なのに悠長なことを考えている私は、
やっぱりどこかおかしくなったみたい。
けれど、そんな「悠長なこと」を考えているのも束の間で、
私の視界を遮った訳がすぐにわかった。
最初に、まず一撃、だった。
鈍くも低い打撃音から始まって、
そのあとに続くのは机や椅子がぶつかることで生まれる衝撃音、
肉骨の叩き付ける音、苦しそうな呻き声。
耳に届く無差別な連撃音は暴力的で、何が繰り広げられているかなんて明らかで。
これは、人と人が殴り合っている音だ。
ただの音でしかない筈なのに。
今、人間同士が殴り合っているものだと、そう、認識したとたん。
怖くてたまらなくなって。
私はこの喧騒の間、ずっと楓くんの胸板にしがみついていた。
