シアワセ∞経路
第12章 失うものと告白
「どうして風子がうちの探した財布を持ってるの……?」
後ろのドアから入ってきた比奈ちゃんが、速足で近づいてきた。
「今、机を見たら中に入ってて。……はい」
長財布を渡すと、比奈ちゃんはバッと勢いよく財布を取り上げ中身を確認していた。
「ない…。三千円入れていたのにない!……風子、ホントに最ッ低」
財布を机の上にボンッと置き、比奈ちゃんは静かに泣き出した。
「私……何もしてない。中も見てないよ……?」
クラスメイトが泣いている比奈ちゃんを心配して集まってくる。
それと同時に無言で疑いの目を私に向けてくる人もいた。
「うっわ、貧乏って怖いわ。友達のお金まで盗むとか。誰か先生呼んできて」
佳菜美ちゃんが教室に響き渡るように声を上げて、私のところへ向かってくる。
見下すようにこっちを見て、誰にも聞こえないようにこっそりと言った。
「ねえ、誰にも信じてもらえないってどんな気持ち?」
鼻で笑って通り過ぎて行く。
自分は何も悪いことをしていないのに、本当にやったようにこの空気が圧し掛かる。
悔しくて握った両手も力が入らない。