シアワセ∞経路
第5章 共力者
颯太さんはベンチからスッと立ち上がり、近くにあった自販機へ向かった。
そこからガコンッと缶が落ちる音が聞こえて、すぐに戻ってきた。
「はいっ。これでも飲んで温まりな」
さっき颯太さんに温めてもらったのに、もう冷えている手に温かい飲み物の缶がのる。
「じゃあ、そろそろ行ってこようかな。次に会った時、塑羅緒がどう思ってるのか教えるから期待してて」
「えっ……!だからそれは……」
「心配しなくても大丈夫。またね、風子ちゃん」
「はっ、はい!」
にっこりとした笑顔で、私に手を振って去っていく颯太さんを見送った。
ひとりになっても、颯太さんがくれた缶ジュースが私の手を温める。
会話するので精一杯で、もらったのが何のジュースか見ていなかったから確認する。
あっ……、カフェオレだ……。
コーヒーは飲めないから、カフェオレの方が好きだった。
飲むのがもったいなくて、ぬるくなるまで握っていた。
次に会った時ってことは、また颯太さんに会えるってことだよね。
カフェオレもらったお礼を言ってなかったから言わなくちゃ。
……って、次と言ってもいつなんだろう。
連絡先も知らないし、颯太さんの通う高校もここからかなり遠い。
二人で会える保証なんてどこにもない。
まあ、会えなくてもいいか。
颯太さんは別次元に帰っていった、そう思うことにしよう。