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恋愛short story

第3章 ※ 消毒


電車を降りてから

伶にグイグイと引っ張られながら

タクシーに乗り込んだ。

ついさっき、あった出来事を

考えると面と向かって

伶の顔が見れない。

チラリと横顔を見ると

伶は前を向いたままだった。

電車を降りてから

一言も会話をしていない。

無言の空気が私を不安にさせる







伶はきっと

私の事嫌いになったよね?……

汚れちゃったからーーーー




ねぇ…伶。

いつもみたいに眉間に皺を寄せて

「何やってんだ千影!」

って怒りながらちゃんと

目を見て欲しいの…

どうしてこんな事に

なっちゃったの…






胸がギュッと詰まるように

苦しくなった。





何か言って欲しくて、

こっちを向いて欲しくて

勇気を出して肩を

震わせながら呟いた。






「さっきはありがとう…」






でも、返ってきた言葉は




「あぁ…。」





あまりにも素っ気なくて

泣き出しそうになった。

溢れそうになる涙を

グッと堪え

喉まで出かかった

嗚咽を抑える。






お願いだから解ってーーー

私が好きなのは

伶だけなんだよ…






沈黙の車内で

伶はずっと私の手首を

掴んだまま離そうとはしなかった。

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