リトル・リトル・バンビーナ
第2章 僕はアナタに欲情してる。
「こんにちは、羽生くん」
ある午後。
俺、羽生 十夜は絶賛サボリ中だった。
俺がサボリでよく行く場所といったら、保健室。
理由は簡単で、美和子ちゃんに会うため。
ガラガラと軽い音を立てた扉の向こうには、
ちょっと長めの黒髪ボブヘアにゆるいパーマをかけた女性がいた。
美人というよりは、可愛らしいという言葉が似合う。
そんな彼女はこの高校の保健室の先生、
美和子ちゃんこと、織音 美和子先生。
午後の穏やかな時間帯、心地よい静かさが学校中に広がっていて、
俺はこの時間が好き。
授業に出るなんてもったいない。
誰も邪魔しないこの時間、
俺はたいてい美和子ちゃんに会いにいった。
そして、美和子ちゃんはたいてい事務仕事をしている。
今日は書類を作っているのか机に向かいながらノートパソコンを打ち付けていた。
「美和子ちゃんに会いたくて、来ちゃいました」
にこ、っと笑いかけてみる。
たいていの女の子はこれでキャーキャーいってくれるんだけど。
美和子ちゃんだけは、違う。
幼い顔つきで、「こら」とにらまれてしまうんだよなぁ。
そんなカオされてもなー……。頭撫でたくなる。
「オトナをからかうんじゃありません」
「オトナって、美和子ちゃん24歳でしょ。
俺のねーちゃんより年下だし」
「羽生くんのお姉さんより年下でも24歳!私はりっぱなオトナです!」
「可愛い24歳だなぁ」
つややかな唇を突き出して、
むうとふくれっ面になる美和子センセだけどさ。
ふつーにほめ言葉なんだけど。