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リトル・リトル・バンビーナ

第2章 僕はアナタに欲情してる。

「織音先生ぇー。かわいー指輪してるねぇ」

「ほんとだ。彼氏からもらったの?」



徹夜でゲームしていたのが祟って、

俺は午前の授業が終わると保健室に駆け込み、ベッドで寝ていた。

美和子ちゃんはいつもの調子で

「保健室は仮眠室じゃありません!」
とちっとも怖くない顔でたしなめつつ、ベッドを貸してくれた。


そして、昼休み。
冒頭の女の子たちの会話に、戻る。

保健委員と思われる二人組の女の子が美和子ちゃんとお昼ご飯を囲んでいた。

カーテンをはさんで聞こえてきた会話は
俺の心中穏やかでいられないものだった。


「あんまり言いふらさないでね?恥ずかしいから」

恥ずかしそうに声が小さくなる美和子ちゃんの様子に
女の子たちは「きゃー!」と歓声をあげる。

「っていうか、左手の薬指にしてるってことはこれ婚約指輪じゃんか」

「しかもダイヤ!ピンクのもついてて、めっちゃ可愛いー。
いいなぁ、先生愛されてるぅ」

「どんな人、かっこいい?」

「結婚いつ?先生、結婚しても学校辞めないでよね!?」


きゃあきゃあ、とはしゃぐ女の子たちに罪はない。

罪はないけど、イライラする。

お前ら、保健委員だろ。

寝てるヤツいるのに何でそんなはしゃげるんだよ。


つーか、美和子ちゃんも、
なんで注意しねえの。

指輪の事、まんざらでもないってか。

婚約指輪ってことは結婚も近いってコトだよな。

そのことにも触れてほしいから、一緒にはしゃいでるワケ?


俺のイライラなんて、彼女たちは知るハズもなく

昼休みが終わるまで指輪と婚約相手の話題で持ちきりだった。

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