テキストサイズ

僕は絵しか描けない

第7章 僕の失恋

「ごめんっ……」

妹尾さんは流れる涙を慌てて拭う。

「どうしたの……」

尋常じゃない展開だったけど不思議と僕は落ち着いていた。

涙の理由をある程度想定していたということもあった。

「ごめんねーっ……へへっ……昨日彼氏にフラれちゃって……なんか急に思い出しちゃって」

涙を拭いながら妹尾さんは笑った。

「妹尾さん……」

「ごめんごめんっ!! あーなに私泣いてんだろ、おかしー……もう昨日一晩で吹っ切れたし、何でもないの!!」

まだ止まらない涙の筋が吹っ切れてなんかいないことを物語っていた。

いつも笑っている妹尾さんは悲しいときにも笑う。
僕はそれが辛くて堪らなかった。


ストーリーメニュー

TOPTOPへ