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僕は絵しか描けない

第10章 ファーストキス

結果としてからかおうがからかうまいが同じ動揺を僕に与えた。

むしろ無自覚な分、今の方が余計に戸惑わせる。

「こんな感じ?」

「うーん……いや、影の線で誤魔化すんじゃなくて、なんと言うか……もっと顔を歪めて憎々しさを出してほしいんだよね」

顔をぐっと歪めて見本を見せてくれるらしい詩子さんは何となく可愛かった。

別にそんなに見る必要はなかったけど参考にする振りをしてじっとその顔を見つめた。

「そ、そんなにガン見するなよっ……例えばだから、たとえば!!」

照れて顔を背けられた。

詩子さんと相談しながら描くと一人で描いていた時には想像もしなかった指摘をたくさん受けた。

そしてそのすべては的確であるように思えた。

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