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僕は絵しか描けない

第10章 ファーストキス

「どう、詩子さんっ? なかなかいいでしょ、これ」

原稿を持って振り返ると詩子さんはベッドの上でぽてちんと横たわって寝ていた。

「なぁんだ……静かだと思ったら寝てたのか」

好き勝手騒いで、疲れたら寝てしまう。

猫のような身勝手な詩子さんの寝顔は呆れるくらいに無防備だった。

起こさないように布団を上からかけてやる。

スースーと寝息をたてる唇がなんだか愛らしかった。

じぃっと見つめてしまう。

赤くて小さな唇。

喜怒哀楽を隠そうともしない唇。

僕は吸い込まれるように顔を近づけてその小さな唇にそっとキスをした。

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