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僕は絵しか描けない

第11章 僕たちの絆

「前からずっと二人で描いてるの」など安立さんは僕たちの経緯について一通り尋ねてきた。

その回答は全て詩子さんがしてくれたので僕は隣でただ頷いていた。

「そっかそっか……なるほどな」

だいたい事情が飲み込めたのか安立さんは頷きながら一呼吸おいた。

「はっきり言わせてもらうね。デジタル式温州みかんは大賞を獲るべき作品だった」

言葉だけ聞けば嬉しくなるような内容だったが、安立さんの声色が重苦しいので誉められているわけではないと僕らにもわかった。

「ストーリーもコマ割りも素晴らしかった。けどね、残念だけど絵に迫力がないんだよ。迫力だけじゃない。魅力も脈動感もない」

安立さんの言葉は一瞬で僕の心を凍りつかせた。

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