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僕は絵しか描けない

第11章 僕たちの絆

携帯の電源を切って走って駅まで向かった。

家につくなり部屋に閉じ籠り、暗くなっても電気はつけなかった。

誰とも会いたかなかったし、なんにも考えたくなかった。

デジタル式温州みかんの出来が良かったなんて馬鹿みたいに浮かれて、結局は詩子さんの足を引っ張っただけに終わった。

自分の無能さと甘さが恥ずかしい。

なんで期待なんてしちゃったのだろう。

なんで自信なんて感じちゃったんだろう。

僕の描く絵には魅力がない、魂がない、脈動感がない。

そんなことははじめからわかっていたじゃないかっ!!

期待なんかするから失敗したときの落胆が大きい。
希望なんて持つから現実を突き付けられたら傷付く。

だから嫌だったんだ。
賞なんて狙いたくなかったんだっ!!

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