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僕は絵しか描けない

第12章 未完成のまま、僕は

「はい、もしも」
「クロっ!! すぐに駅前に集合ね!!」

挨拶も打ち切るように詩子さんは告げた。

「う、詩子さん。今日はもう遅いから明日にしようよ」

「駄目っ!! 今すぐっ!! こんな夜遅くに描き上げるクロが悪いんだからね!!」

なんだか詩子さんは興奮していた。

「わかったよ。じゃあ自転車で行くから少し待っててね」

「もう遅いっ!! 私スクーターでクロの家の近くの駅に向かってるから!!」

「なにそれ……」

相変わらず詩子さんは一方的だ。
しかしそれがなんだか嬉しいと感じる自分がいた。

一方的に切られた携帯を握りながら僕は笑った。

詩子さんがいれば、僕はなんだって出来る気がしたんだ。

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