僕は絵しか描けない
第12章 未完成のまま、僕は
詩子さんの葬儀は盛大に行われた。
弔問客は学校の友人だけでなく、資産家の両親の知り合いの人もたくさん来ていた。
高校三年生にして他界した詩子さんを悼む人たちは皆沈痛な面持ちだった。
詩子さんは、ほぼ即死だったらしい。
信号のない交差点を猛スピードで走る詩子さんと、同じく猛スピードで走る車が衝突した。
すぐに救急車で運ばれたが、病院に着いて間もなく、詩子さんの心肺は停止した。
こんな夜更けに大急ぎで詩子さんがどこへ向かおうとしていたのか、誰も知らない。
僕以外は。